胃がん

進行の早い「胃がん」とは?

胃の壁は、内側から大きく粘膜、筋層、漿膜に分かれています。このうちの粘膜の細胞ががん化し、増殖することで発生するのが「胃がん」です。がんはその後、徐々に筋層、漿膜、さらには横隔膜、肝臓、膵臓、大腸などの臓器へと広がっていきます。
なお、胃の壁にしみ込んでいくように広がる「スキルス胃がん」は、特にその進行が早くなります。

胃がんの進行度

胃がんの進行度胃がんの進行度は、胃がんの深さ、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無などによって判定されます。
大きな胃がんであっても浅く転移がなければステージⅠとなる一方で、小さくても他の臓器に転移をしている場合にはステージⅣとなります。

胃がんの症状

初期症状・前兆は現れにくい

初期症状・前兆は現れにくい

胃がんは、自覚症状が多くありません。特に初期には、ほとんど無症状のまま進行します。
以下のような症状がすでに現れている場合には、すぐに当院にご相談ください。

  • 胃の痛み
  • 胸やけ
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 黒色便(タール便)
  • 吐血

げっぷ・おならは胃がんの症状?

げっぷ、おならがあるからといって、基本的に胃がんを心配する必要はありません。
ただ、当然ながら病気は「がん」だけではありません。
逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、食道裂孔ヘルニアによってげっぷが出る、過敏性腸症候群によっておならが出る、ということもあります。
特に、げっぷやおならが増えたと感じる場合、他に症状がある場合には、必ず医療機関を受診するようにしましょう。

胃がんの症状に気付きにくい理由

胃がんは、症状の乏しいがんです。ただ、症状が出ているのに気づかない、気づいていながら受診しないというケースもあります。その理由としては、以下のようなことが考えられます。

  • 症状が強く出る(痛くて我慢できない)ということがない
  • 胃がんならではの症状というものがない
  • 軽い胃炎でそのうち治るだろうと甘く見てしまう
  • 長く症状を抱えているうちに、症状があることが当たり前になってしまう

黒色便(タール便)、吐血といった症状が現れた場合には、比較的受診につながりやすくなります。ただ、黒色便や吐血があるということは、胃がんがかなり進行しているものと考えられます。
他の病気にも言えることですが、「症状の重さ」ではなく、「症状がある」ことを受診の基準として考えるようにしましょう。

胃がんの原因
なりやすい人の特徴

胃がんの最大の原因となるのが、ピロリ菌感染です。またそれ以外にも、喫煙や塩分の摂り過ぎ、肥満、ストレスなどがリスク因子となります。
いずれかに該当する場合には、そうでない人と比べると、胃がんのリスクが高くなります。

ピロリ菌に感染している

ピロリ菌に感染している

ほとんどは4歳までに家族(特に親)から感染しているものと考えられます。その時点では無症状ですが、月日の経過の中で徐々に胃の粘膜が傷つき、慢性胃炎・萎縮性胃炎の原因となります。そして萎縮性胃炎の一部については、がん化することがあります。
ピロリ菌の持続感染は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。当院では、ピロリ菌検査・除菌治療に対応しております。

喫煙の習慣がある

喫煙の習慣がある

国立がん研究センターの報告によると、喫煙者の胃がんリスクは非喫煙者の1.6倍になるとのことです。
喫煙習慣は、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がん、口腔・咽頭がん、鼻腔・副鼻腔がんとの因果関係も判明しています。
また喫煙者だけでなく、受動喫煙をする人も同様のリスクが懸念されます。

塩分過多な食事が多い

塩分の摂り過ぎは、古くから知られている胃がんのリスク因子の1つです。
厚生労働省では男性で7.5g未満、女性で6.5g未満という1日あたりの塩分摂取量を推奨していますが、ほとんどの方がこれを上回っています。濃い味付けが好きな方、外食、コンビニ弁当を食べる機会の多い方は、特に注意が必要です。

肥満体型

国立がん研究センターの調査によると、BMIが27以上になると、胃がんのリスクが高くなることが分かっています。
BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)という式から簡単に計算できます。
一度、ご自身の体重・身長を当てはめて計算してみましょう。

ストレスを抱えている

ストレスは、自律神経のバランスを乱し、胃酸の過剰な分泌、胃腸の蠕動運動の低下などを招きます。
そのため、胃がんのリスクに少なからず影響するものと考えられています。

胃がんの検査方法

胃カメラ検査

口または鼻から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を観察します。胃がんの早期発見において、現在もっとも信頼性のある検査と言えます。「影絵」として観察するバリウム検査とは異なり、隆起の少ない病変であっても、色調や出血の有無から早期発見が可能です。
また、疑わしい組織を採取し、病理検査・確定診断を行うことができます。
当院では、鎮静剤や経鼻内視鏡を用いた苦痛の少ない胃カメラ検査を行います。女性患者様の場合は、女性医師が担当することも可能です。

バリウム検査

バリウムを飲んだ上でレントゲン撮影を行い、胃粘膜の凹凸を観察する検査です。
ただ、バリウム検査で異常があった場合にも、精密検査として胃カメラ検査が必要になります。

血液検査

血液検査では、胃がんなどのがんに反応する腫瘍マーカーを調べます。
ただし、初期の胃がんでは数値が上昇しない、良性であっても上昇するというケースもあるため、診断のために補助的に行ったり、経過を観察するために行うことがほとんどです。

胃がんの治療方法

胃がんの治療方法には、内視鏡治療、外科手術、化学療法などがあります。

内視鏡治療

浸潤・転移のない早期の胃がんであれば、内視鏡を使った治療の適応となります。
内視鏡の先端から出す器具でがんを切除します。胃がすべて温存される、低侵襲の治療となります。

外科手術

腹腔鏡または開腹による手術です。リンパ節転移のない胃がんについては、侵襲の少ない腹腔鏡で対応できる可能性が高まります。
胃の一部またはすべてを摘出します。

化学療法

内視鏡治療・外科手術ができない場合には、抗がん剤を用いた化学療法が行われます。

【早期発見・早期治療で治す】

胃がんの生存率と予防

胃がんは、早期発見・早期治療によって5年生存率が90%を超えます。
胃がんは症状に乏しいがんであるため、早期発見・早期治療のためには定期的な胃カメラ検査が欠かせません。
特にリスクが高くなる40歳以上の人は、年に1度は胃カメラ検査を受けることが大切です。
また、そもそも胃がんにならないに越したことはありません。ピロリ菌の除菌、禁煙、塩分摂取量のコントロール、肥満解消、ストレスの軽減などにより、胃がんのリスクを少しでも低くしておきましょう。