おならが臭い原因=腸内細菌の乱れ
私たちの腸内には、約1000種類、計100兆個の細菌が生息しています。そしてその細菌は、大きく「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分けられます。
善玉菌は、野菜・果物・豆類を摂った時にオリゴ糖や食物繊維をエサにして増え、ほぼ二酸化炭素のみで構成されるにおいの少ないガスを出します。一方の悪玉菌は、タンパク質や脂質をエサとして増え、アンモニア、スカトール、インドールといったにおいの強いガスを出します。その他、不規則な生活リズム、便秘も、悪玉菌の増殖を招きます。
おならが臭いという場合には、腸内で悪玉菌が増えている、つまり腸内細菌のバランスが乱れている状態と言えます。
なお、日和見菌は善玉菌と悪玉菌の中間的位置づけの細菌で、身体が弱った時だけ、腸内で悪い働きをします。
悪玉菌が増える原因
- 肉類、魚介類、玉子、乳製品などの動物性たんぱく質の摂り過ぎ
- 不規則な生活リズム
- 便秘
おならが臭いのは病気のサイン?
考えられる病気は…
肉類を食べ過ぎたためにおならが臭くなってしまったとしても、食生活を改善すれば比較的短期間で臭いを減らすことができます。
ただ、何らかの病気によっておならが臭くなる、ということもあります。食生活を改善しているのに臭いおならばかり出るという場合には、これらの病気の可能性を疑う必要があります。なお、おならのにおいが強い時だけでなく、以前より明らかにおならが増えた、という場合も注意が必要です。
慢性胃炎
ピロリ菌の長期感染、鎮痛剤の長期使用、塩分の摂り過ぎ、ストレスなどを原因として起こる慢性の胃炎です。胃痛や吐き気、胃のむかつき、食欲不振などの症状に加えて、ゲップやおならのにおいの悪化が見られることがあります。ただ、症状が強く現れず放置してしまうケースも少なくありません。
放置していると萎縮性胃炎へと進行し、そのうちの一部はさらに胃がんへと進行します。
過敏性腸症候群
慢性的な腹痛や下痢・便秘、血便といった症状が見られる一方で、大腸などに器質的な問題が認められない状態を指します。下痢型・便秘型・混合型・分類不明型に分けられ、このうち分類不明型におならが増えるガス型が含まれます。
大腸がん
加齢や食生活の欧米化、加工肉の摂り過ぎ、飲酒・喫煙、肥満などを原因として発症します。
血便や下痢・便秘、腹痛、腹部膨満感、便が細くなるなどの症状に加えて、おならが増える・においが強くなるといったことがあります。
ほとんどの大腸がんは、大腸ポリープががん化したものであるため、大腸がんの予防においては定期的な大腸カメラ検査によって大腸ポリープを発見・切除することが重要になります。
吞気症(どんきしょう)
呑気症とは、唾液を飲み込む、食事をするときなどに、過剰に空気を飲み込んでしまうことを指します。緊張している時、不安が強い時などに起こることが多いものの、はっきりとした原因は分かっていません。
空気をたくさん飲み込むことで、ゲップやおならが増えます。ただし、必ずしもにおいが強くなるとは限りません。
クローン病
10~20代の若い人に多い、口から肛門までのいずれかの消化管で発症する炎症性腸疾患です。中でも頻度が高いのが、小腸と大腸です。
下痢、腹痛、血便、体重減少、発熱などに加えて、おならが増えたり、においが強くなったりすることがあります。
はっきりとした原因は分かっていませんが、食品に含まれる微生物、ストレスなどが発症に影響しているものと考えられています。
おならが臭い時の治療
各疾患に対する治療
慢性胃炎、過敏性腸症候群、大腸がん、クローン病、呑気症などの病気が原因になっている場合には、それぞれの病気に対する治療が必要です。
慢性胃炎、過敏性腸症候群、クローン病については、当院でも治療を行っております。大腸がんの場合も大腸カメラ検査による早期発見が可能ですが、治療については提携する病院をご紹介します。
呑気症については、緊張や不安をすぐに取り除くことができれば理想的ですが、難しい場合も単純に“空気を吸い過ぎないように意識する”ことで改善することがあります。また食事の際には、よく噛むこと、麺類などを勢いよくすすらないことで、ある程度の改善・予防ができます。
腸内細菌のバランスを整える
病気を原因としない場合には、腸内細菌のバランスを整える食事療法、生活習慣の改善が有効です。
野菜・果物・豆類をやや多めに摂って善玉菌を増やす、肉類・魚介類・玉子・乳製品などを控えめにして悪玉菌を減らす、というのが基本的な対応となります。
その他、不規則な生活リズムや便秘を改善することも大切です。
「臭いおなら」が続くときは
大腸カメラ検査を
健康な人でもおならは出ますし、ある程度のにおいはあります。
ただ、臭いおならが続く、以前よりおならの回数が増えている気がする、といった場合には注意が必要です。先述の通り、過敏性腸症候群、大腸がん、クローン病などの病気が疑われるためです。気になった時には、お早めに当院でご相談ください。必要に応じて、大腸カメラ検査を行います。また、慢性胃炎が疑われる場合の胃カメラ検査にも対応しています。
当院では、内視鏡専門医による、鎮静剤を用いた負担の少ない胃カメラ検査・大腸カメラ検査を行っております。また女性患者様の場合には、女性医師が担当するということも可能です。